借地上の『建物賃借人』の保護について
相談件数が多いのも特徴です!
借地権は『土地の利用契約』が重要!
2025年、正月明けは寒い日が連日続いております。
世間では、年末年始のお休みをされて、お正月気分も抜けるには時間がかかると思います。
弊社は1月4日より始業しております。
ご挨拶廻りさせて頂いておりますが、取引先の法人様は1月6日スタートされる様です。
当方としては、最低でも不動産の知識は間違える訳にはいきませんので
今年も基本的な知識をブログで書いていこうと思います。
今回のブログは『借地上の建物賃借人の保護』について、考察したいと思います。
昨年、契約した物件で貸主様は『借地権の借主』でもあり、賃貸借契約する際『土地の賃貸借契約書』を確認して契約書を作成しなければなりません。
貸主様からは、そこまで確認する必要があるの⁈といったご意見もありました。
地主から土地を借りて、建物を所有している場合『借地契約が終了』すると、原則として建物を取り壊し、その土地を返還しなければなりません。
この場合、建物を借りている賃借人は、無条件で建物から退去しなければならないのか、知っておく必要があります。
1,借地契約終了の場合の原則
借地契約が終了すれば、借地人は建物を取り壊して原状回復して、地主に返還しなければなりません。
しかし、一定の場合に、どうのような救済措置が有るのか、考察する必要があります。
2,借地契約の終了と借家人の保護
❶旧法借地権の場合
①契約期間満了の場合について
借地権が期間満了により終了した場合、借地人は地主に対し借地上の建物を買い取り請求することが出来ます(旧借地法第4条第2項)
この場合、地主と借地人との間で建物の売買契約が締結されたことになり、建物に借家人がいれば、『借家人付きの売買』になりますので、借家人は建物から退去する必要がありません(旧借家法第1条第1項)
②契約解除の場合
地主が借地人の賃料の不払い等を理由に借地契約を解除した場合は、前項の『建物買取請求権』は認められません。
この場合、借地人は建物を取り壊し、土地を地主に返還しなければならず、借家人も当然に建物から退去しなければなりません。
但し、借地契約の解除が、地主と借地人の合意によるもので有るときは、最高裁判所の判例によって、その解除は借家人に対抗することができないとされています。
参考までに
事件番号 昭和35(オ)第893号
事件名 建物退去土地明渡請求
裁判年月日 昭和38年2月21日
法廷名 最高裁判所第一小法廷
裁判種別 判決
結果 棄却
判例集等 民集 第17巻1号219頁
原審裁判所 高松高等裁判所
原審裁判年月日 昭和35年5月27日付
判示事項 土地賃貸借の合意解除は地上建物の賃借人に対抗できるのか
裁判趣旨 土地賃貸人と賃借人の間において土地賃貸借契約を合意解除しても、土地賃貸人は、特別の事情が無い限り、その効果を地上建物の賃借人に対抗できない
参照法条
民法第545条第1項、第601条
今から60年以上前に、争われた判例ですが既成事実として保管されております。
❷新法下の借地権の場合
①普通借地権の場合
原則として旧法借地権と同じになります。
②定期借地権の期間満了と借家人の地位について
定期借地権の場合は合意により、『建物買取請求権』を認めないとすることが出来ます。
また、事業用借地権の場合は、そもそも建物買取請求権が有りません。
したがい、この借地権のもとでは借家人が建物買取請求権行使の結果として、保護されることにはなりません。
③善意の借家人の保護について
新法借地権は、借地権が期間の満了によって終了する場合に、借地上の建物の借家人が、借地権の存続期間が満了することを、契約満了の1年前までに知らせなかった時は、借家人の請求により1年を超えない範囲内で、裁判所が明渡しにつき猶予期間を定めるという制度が新設されております
(借地借家法第35条)
④建物譲渡特約付き借地権の場合について
建物譲渡により借地権が消滅した場合、借地人または借家人は請求により、その建物につき機関の定めのない借地権を設定したとみなされます
(借地借家法第23条第2項)
纏めますと、借地上の建物の借家人は、借地契約の存続する限度においてのみ『借家契約が存続』する制約を負っています。
旧法借地権下では、借地契約が簡単に終了することはありませんが、新法借地権が認める『定期借地権』『事業用借地権』は、期間がきたら当然に借地契約が終了するものです。
借家契約を締結するにあたり、土地の利用契約がどのようになっているのかが重要とされます。
今まで、このような事案の相談もありましたが、複雑な権利関係を整理して対応させて頂いております。
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