無断転貸⁈借家人の所在が不明⁈
契約を解除される場合もあります!
賃貸を借りる場合、民法(法律)の定めがあります
2024年(令和6年)も、残すところ僅かとなりました。
今年一年振り返ると、元日から災害、夏場の猛暑、物価が高くなり、思いかえると悪いことが多かったと思います。
自然災害は、一何処で起きるか分かりませんが、当方のような権利関係や、古くから決められた法令を遵守しなければならないので、今回のブログは典型的な問題について考察してみたいと思います。
タイトルで『無断転貸』として記載しておりますが、今回は『借家の無断転貸』についてご説明させて頂きます。
民法第612条
借家人は借家契約に基づいて建物を使用収益する権利を持っています。
その権利は自ら使用する権利であり、無断で他人に譲渡したり、転貸したりすることは禁じられております。
もし譲渡、転貸を行うと、契約自体を解除される法律になります。
1,借家権の譲渡、転貸とは⁈
借家権の譲渡とは、借家契約に基づく一切の権利義務を第三者に移転することを言います。
従い、建物を利用する権利も、賃料を支払う義務も他人に移転します。
『転貸』とは、世の中で言われる『又貸し』のことです。
借家人は、借家権を譲渡した場合、賃貸借契約から外れますが、転貸の場合は賃貸借関係から外れません。
譲渡、転貸のいずれの場合も、家主(建物所有者)の承諾が必要であり、承諾のないときは『契約解除』の理由になります。
2,禁止の理由と解除の制限について!
①借家権の譲渡、転貸が禁止される理由
借家権は『債権』ですから、人に対する権利であり、物に対する権利ではないのです。
従い、契約の相手側である家主(建物所有者)の承諾がなければ、原則として権利の譲渡は出来ません。
借家人が変われば、建物の使い方が変わるもので、その建物の消耗の頻度もその差が生じます。
そのような面から見ても、家主(建物の所有者)の承諾が必要になるのです。
②契約解除の制限
借家権の譲渡や転貸は、原則として契約解除の主な理由になります。
しかし、裁判等でも必ずしも『無断譲渡』が有っただけでは、家主の解除を認めず、解除権の行使にある程度の制限を加えています。
例に挙げると、借家契約は継続的な契約関係で有り、当事者間の信頼関係が要件になることから、その信頼関係が破壊されている場合、初めて解除が認めれるのです。
ややこしい判例もあります。
③最高裁・昭和28年9月25日の判決
この判決は、今から70年以上も前なのですが、かなり有名です。
賃借人が賃貸人の承諾なく第三者をして賃借物の使用収益をなさしめた場合でも、賃借人の当該行為を賃貸人に対する背信行為と認めるには足らない特段の事情があるときは、賃貸人は本条(民法第612条)の2項により契約を解除することが出来ない
④建物の一部の転貸について
建物の一部の転貸も原則として禁止されます。
しかし、転貸の相手側が親密な関係者であるとか、間貸し部分が家具の重要部でないとか、間貸しが無償であるなどの場合、間貸しが背信行為とはいえない理由で、解除を否定しております。
借家権の無断譲渡、転貸は原則禁止されておりますので、必ず、家主(建物の所有者)の承諾を受けて頂きたいものです。
管理会社がある場合、必ず管理会社の承諾・許可の手続きが必須となります。
続きまして『借家人の所在が不明』の場合も考察したいと思います。
借家人が建物に家財道具を残したまま所在不明になったとき、契約書に『契約終了後、家主は家財道具を搬出処分できる』という特約があった場合、任意に借家人の残置物を搬出し、建物の明け渡しを実行できるのでしょうか⁈
3,自力救済の禁止について
借家人が家財道具を残したまま何か月も不在で有り、賃料も滞納している場合、家主は家財道具を搬出し、その建物を新しい借家人に貸したいと、普通は考えるものです。
しかしながら、契約終了後に家主が家財道具を処分できる特約事項があったとしても、契約終了について借家人との間に合意が有り、かつ借家人が退去後でなければ、任意に契約内容を実現することが出来ないものです。
上記の件を『自力救済の禁止』と言います。
通常『自力救済の禁止』とは、権利に侵害された者が、裁判所の手続きを経ずに自力で排除することが出来ない原則です。
家主が『契約終了後に家財道具を処分できる』という権利を実現するには、原則として裁判所に提起する必要があります。
4,解除通知と裁判の提起
①解除通知
借家人に対する建物明け渡しの訴訟を提起する前に、契約解除を借家人に通知します。
建物明け渡しを実行できるのは契約終了であり、その為には、先ず契約を解除することが必要です。
しかしながら、解除の通知は相手側に到達しなければ、その効力が認められません。
こういった相談は、たまにあるのですが問題が大きいものです。
民法第97条、第2項
所在不明の場合は、簡易裁判所に公示送達の申し立てを行い、裁判所の掲示場に解除の通知を提示して、かつ役場などの掲示場に同様の掲示をすれば、掲示を始めた日から2週間が経過した時に、相手側にその通知が到達したものと見なされます。
②裁判の提起
解除通知到達後、借家人に対して建物からの退去を求める裁判を提起します。
そして、その判決に基づいて強制執行の申し立てをして、明け渡しが実行されることになります。
判決が出されても、家主は自分で家財道具の搬出処分を行えません。
③強制執行により明け渡しを実行
原則として『自力救済』は禁止されていますので、上記のような場合、家主が搬出処分を強行すれば賠償請求や原状回復を請求されることが有ります。
場合により、『窃盗罪、住居侵入罪など』刑事問題にも発展しかねません。。。
時間、費用を要しても、裁判所に提訴し、強制執行の手続きをするのが安全であると思います。
今回のブログは長年かかえる問題であるため、貸す側、借りる側双方ともに理解することが重要です。
民法第97条第3項
意思表示は、表意者が通知を発したあとに『死亡』し、『意思能力を喪失』し、又は『制限行為が無効になった』としても、意思表示の効力はなくならず、相手側に到達した時に効力が発生します。
民法は、時代とともに変更される部分もありますが、基本法は変更はないものです。
裁判でも、原告、被告双方ともに弁護されるもので、不動産の場合も同様でこの問題は何時でも頭を抱えるものです。
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