『知的障害のある子供』の将来の生活について
此れからの人生は色々と学ぶことが重要です!
『障害者』を守るにも色々と熟知することが重要です
前回までのブログは『成年後見制度』の内容を考察いたしました.
今回のブログは『知的障害のある子供さん』が居られる方にあてたブログになります。
私が居住しております至近距離に『障害者の方の働いている施設』が複数ありますので、とても身近に感じており、その施設で調理された商品をよく買いに行っております。
一生懸命に調理された感じで、味も損なうことも無いし、社会福祉の職員さんも常連さんと言う感じです。
今回ご相談された方ですが、昨年ご主人が他界された70歳になりました奥様からのご相談です。
子供さんは二人おりますが、長女さんは結婚されて家を出ておりますが、長男さんは知的障害がある45歳の方になります。
ご自宅で長男さんの面倒をみておりますが、預貯金と収益のある不動産を所有されておりますが、ご相談者が亡くなった場合を真に心配してのご相談になります。
ご自身が亡くなった場合、長男さんを誰が目をかけてくれるのか、貯金・不動産の管理をどうするのか、かなり悩んでました。
1,ご相談者の逝去後の財産について
先ずは『遺言』を残すことが重要と思います。
『遺言』は、残された子供に平等に分けるのが原則で、この時に配分される遺産を『法定相続分』ですが、法定相続分と異なる形で誰かに多く分配することも可能です。
それは『遺言状』を作成することで可能になり、例えば障害をもつ長男さんに多めに相続することも『遺言』することも出来ますが、その方法として自分で記載する『自筆証書遺言』や、公証役場で公証人が作成する『公証証書遺書』が有ります。
公正証書遺言で有れば、遺言書によって不動産の登記名義の変更や、預貯金の解約、名義書き換えなどが比較的にスムーズにでき、遺言執行者を指定することで、障害のある長男の手を拱くことがなく、遺言の内容を実現させることが出来ます。
また遺言執行者を指名しておくことで、障害者のある子供の手を煩わしい遺言の内容を実現させることが出来ますが、全部をその子供に残したい場合でも、他の子供に遺留分が有りますので、他の子供にも遺産を譲受する場合は、遺留分相当額の分配を求められることが有ります。
『遺留分』とは、法定相続人が必ず貰うことが出来る財産で、子供達だけが相続人の場合は、全部で法定相続人の人数で割ります。
【民法第1028条】
本件の場合
長女は、相続財産の1/4
(遺留分1/2)×(法定相続人分1/2)
上記の計算で遺留分を取得する権利が発生します。
トラブルを回避するには、遺留分を持つ子供達には遺留分相当額を残すことが賢明と考えられます。
2,日常生活をどうするか⁈
遺言によって、財産を残すことが出来たとしても、親としては障害をもつ子供の日常生活をどうするのかが気になります。
母としても、此れから老後の病気等にて衰弱することも考えられますので、未来永劫障害をもつ子供との生活は考えづらいものです。
一つの方法として、母と障害のもつ子供さんと一緒に『介護付きの養護施設』に入所することが私としては、考えられますが最近は、40~50代の独身者が介護をしている場合などを想定とした介護付きの親子同居型賃貸住宅なども、見受けられますので、そのような施設を利用するのも可能性があると思います。
子供さんが介護が無ければ生活できない場合、介護施設の入所前に、成年後見人の申し立てをし、母が後見人となり入所する可能性もあります。
障害をもつ子供さんが一人暮らしを出来ないわけではなくても、財産管理が普通にできない場合や財産的な被害にあう可能性がある場合
障害をもつ長男は、自宅に住むことを選択しても、食事や家を清潔に保てない問題や、詐欺被害にあう事態になることも考えられます。
此処は重要ですが、長男が介護施設の入所を拒否して自宅に籠ることも考えられますが、母と一緒に介護施設に入所することが、一つの選択法ですが、長男の成年後見人として母がなることが考えられるものです。
如何なる場合でも、施設入所後は施設の職員さんとの連携をとり、母が後見人になっていない場合には、後見開始の申し立て権限のある人に、母が死亡した後に後見開始の申し立てをしたり、後見人候補者となる方に依頼しておくことが望ましいでしょう。
3,日常生活自立支援事業を活用
障害のある長男が、一人暮らしはできますが重要な契約が出来ない、お金の管理が出来ない場合は、どの選択が良いのか考えたいものです。
このような場合、『社会福祉協議会の日常生活自立支援事業の援助』を利用する方法が望ましいと思います。
『日常生活自立支援事業』は、福祉サービスの利用援助を柱とし、年金や福祉手当がきちんと入金されているかの確認、預金から生活費の引出し、医療費・社会保険料・電気・ガス・水道料金などの公共料金、日用品の購入代金の支払いなど日常的な金銭管理を手伝ってもらうことが出来ます。
また、預貯金の通帳、年金証書、不動産の登記済権利証(登記識別情報)、契約書、実印、金融機関の届印、カードなどの重要な書類等を『社会福祉協議会』に預託することも出来ます。
障害のあります長男に、ある程度の生活費があり普通に生活できる状態であれば、このような援助を利用してある程度の年齢になるまで、何とか一人暮らしも可能性があると思われます。
『日常生活自立支援事業』を利用するには、先ず市区町村の社会福祉協議会に相談し、まず母と長男の状況を理解してもらうのが重要です。
長男が、障害のため金銭管理が出来ないことや、親子の日常的な金銭管理、書類の預かり等、必要な援助を内容とする契約を締結し、日々の生活を見守ってもらいます。
何方かの病気が進行して一人暮らしが厳しければ、その時には『日常生活自立支援事業の福祉サービス』を利用して、施設に入所することも可能でしょうか。
全て社会福祉協議会や行政任せにはいかないもので、成年後見人の選任が必要になる場合、後見人でなくても、兄弟姉妹の助けを借りることが不可欠になります。
この協力については、事前に兄弟姉妹に了承を得ることが望ましいと思います。
4,ある程度の判断能力がある場合は⁈
お金を普通に使えて、極めて体が弱い方も考える必要が有りますが、そのような場合には『信託』を利用する方法が有ります。
生前に『親が信託契約を締結』して、一定の財産を信託財産として受任者に委託して、親の死後一定額を受任者から子供に支払わせる方法です。
海外では多く見受けられますが、今の日本では信託については、歴史も浅く財産の名義が受託者に移ることは有りますが事例はそう多くは有りません。
5,親自身が能力の低下に不安がある場合は⁈
障害をもつ長男の面倒を診るつもりでも、老いや病気などでそれ自体難しくなることもあり、親自身の判断能力の低下に備えておくことも重要です。
その時には、親が誰かの信頼のおける人と財産管理の契約がや、任意後見契約の締結をしておくことも考えられ、これらの財産管理人として弁護士を選び、自分が死亡したあとには兄弟姉妹と連絡をとってもらい、障害をもつ交換開始申し立ての力になるよう相談することも重要です。
親亡き後の財産管理には、長男の状態をみながら、幾つかの方法を組み合わせて、成年後見、遺言、任意後見契約などの制度を使い、社会福祉協議会や行政の手も借りて、親が有る程度安心できるような準備をするのですが、その時は法律に詳しい『法曹』などの知恵を利用して頂くのが最良であると思います。
不動産の仕事をしておりますと、今回のようなご相談も有りまして、知らないとは言えないもので、普段から学んで回答するのも仕事の一部分であります。
ご相談はお気軽にお申しつけ頂ければと思います。
6,申立て費用等を負担できない方について
申立人の中には、申立費用を用立て出来ない場合や、後見人等の報酬の支払いが出来ない方も少なからずいらっしゃいます。
そのような方でも、成年後見制度を利用できるよう『自治体』等で様々な工夫がされております。
①成年後見制度利用支援事業
この事業は、介護保険法に定める地域支援事業のうちの『任意事業』として市区町村で行われていますが、この制度利用すると、申立て費用の他、後見人等の報酬の一部について助成を受けられます。
※申立の代理を弁護士に依頼した場合の弁護士費用は、申立費用に含まれませんので、助成の対象外となります。
但し、予算の問題があるため、どこの市区町村でも行われているかは確定出来ませんが、次の要件が必要になります。
介護保険サービスまたは、障害者福祉サービスを利用しまたは利用とする高齢者・重度の知的障害者または、精神障害者で、且つ後見人の申し立て費用、後見人等の報酬の一部について助成を受けなければ、成年後見制度の利用が困難と認められること。
※詳細は居住されております市区町村にご確認下さい。
②日本司法支援センターの利用
日本司法支援センター(通称法テラス)では、民事法律扶助事業(法律相談、代理援助、書面作成援助)のうち、代理援助として、申立費用・申立代理人の弁護士費用や必要により鑑定費用の立替支援をしております。
但し、後見人等への報酬は支援対象外になります。
支援を受けるためには、扶助要件として収入金額による資金要件を満たす必要が有ります。
更に扶助を受けた費用は、法テラスから免除の決定を受けた場合を除いて、分割払いで法テラスに返済しなければなりません。
詳細は、全国各地にあります日本司法支援センター(法テラス)にお問い合わせください。

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