民法709条 その2
訴訟しても得をすることが無い紛争。。
身の回りの紛争⁇
民法第709条の例『不動産トラブルの代表格』です。
対応を甘く考えていると、最悪の場合は調停から裁判沙汰になる結果になります。
不動産業者もすですが、相隣関係の当事者の方々も時間でいえば『半年以上』は悩み、その結果は嫌な思い出のような感じになるものです。
1,身の回りの紛争の損害賠償請求の難しさについて
インターネットや専門図書を見ても、その困難さは明らかで、『交通事故被害の損害賠償請求』などと異なり、その難しさと特徴をあげると、幾つか定義があります。
①侵害された権利が何であるのか、その定義が困難であること
以前のブログでも例に挙げていますが、建物を再建築計画が以前より此方に近くなったり、階高が上がり(2階建てから4階へ)、此方の日照が阻害される事案
と言っても、『日照権』という権利の内容定義が確立していないため、極端に酷い場合を除いて、権利を侵害されたとは考えづらいものです。
②精神的な損害について
慰謝料が主になるので、損害額の証明が非常に難しいものです。
不動産関係でよく有るのが、南側に高層マンションがいつのまにか計画着工され、今までの眺望・日当たりが大きく変貌するような事案です。
我が家は、以前は東京湾までの眺望があったのですが、再開発等で段々見える範囲が遠方から近所という具合に狭まる事案です。
中には、高層マンションが完成した結果、日照やビル風が吹き荒れて生活に困難になる地域もあります。
以前、仲の良かったマンションデベロッパーの担当者も、住民説明会にて厳しい意見が多々あったようですが、今回の『民法第709条』の代表格でしょう。
③騒音・振動・悪臭などの被害について
主観的な要素が強く、より損害額の立証が困難です。
例に挙げれば、隣家の子供の無造作に演奏される『ピアノの練習音』や、神経質な隣人であれば、『クーラーの室外機音、風鈴の音色、小鳥や犬猫の鳴き声』等、隣人には苦痛になるようです。
中には、騒音により頭痛、吐き気、目まい等の肉体的苦痛や、精神的な苦痛を受けることもあるようです。
交通事故の負傷の場合と同等ですが、相場について確定した要素がないのです。
インターネットに掲載されていたのを閲覧したことが有りますが、神奈川県鎌倉の山奥で近所の飼い犬の鳴き声が原因で『自立神経失調症』になり、損害賠償になった事案も有ります。
確かに『騒音』によって、病気になることは十分あり得ますが、病気と言っても『消化不良・不眠・食欲不振・自律神経失調症』これらの病気の原因が、この騒音によるのもであるのか立証が困難であると思われます。
因果関係、古い諺で『風が吹けば桶屋が儲かる』のたとえが有りますが、いざ裁判沙汰になれば、学問上、相当因果関係がある場合のみ、『損害賠償』が認められるものです。
2,法的手続きについて
身の回りの紛争で、近隣の人を相手として訴訟などの法的手続きで損害賠償請求することは、法律上認められていますが、実際にその手続きをした場合、色々と覚悟することが有ります。
①手続きの依頼
法制のもとでは、訴訟手続きするのは『弁護士』以外訴訟手続きを依頼することは出来ません。
民事訴訟の提起は、立証し、判決を求めることは出来るのですが、交通事故の物損、負傷時の請求とは異なり、定型化されていない身の回りの被害は、理論的に主張が困難で『証拠上立証が困難』です。。
②少額事件について
身の回りの事件は、弁護士に依頼しづらいものです。
賠償請求額が低い場合、弁護士費用のほうが多くなる場合も考えられます。
例えば、眺望が悪くなった等の請求は通常『数十万円』でしょうか⁈
内容証明書作成するだけで『2~3万円』
裁判が長引く場合、恐らく『数十万円』程度費用がかかる可能性が有ります。
中には、法律事務所を通さないで、自分自身が原告として裁判所に出頭して遂行する訴訟『本人訴訟』を行うケースもありますが。。
因みに、簡易裁判所で本人が訴訟を遂行できるようですが、地方裁判所では極めて珍しいとの事です。
余談ですが、簡易裁判所にて本人訴訟できる事例は
『貸金・手形金・自動車事故の物損』などの定額的な事例に限定されます。
被害者本人が出かけて訴訟する際は不便であり、その都度裁判所に本人が出頭する点で、かなり心身ともに負担がかかるものです。
民法第709条ですが、まだまだ続きの説明が御座います。
次回のブログで算定方法についてご説明いたします。
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