『景観法』って聞きますが。
意外と知らない法令で、家を新築・改築する際に気をつけること。
『景観緑三法』って聞いたこと有りません!?
不動産の契約時に必ず『重要事項』の説明をしておりますが、大雑把になりがちな事項が有ります。
『都市計画法、建築基準法以外の法令に基づく制限』の中で、比較的説明される『景観法』について考察したいと思います。
その中で『景観法』は、2004年6月18日に公布された、比較的新しい法令です。
同時公布された『景観法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律』『都市緑地保全等の一部を改正する法律』と合わせて『景観緑三法』と呼ばれており、『国土交通省』が所轄官庁となっております。
❶施行にあたりその背景に有る理由について
日本国内は、高度成長期以降、全国各所で地域性・伝統・美観を軽視する住宅、ビル、工場、護岸等の建築物・構造物が建てられた時代が有りました。
日本の高度成長期(1955年~1973年)に建築された、山間部や国定公園内に残された廃ホテル・廃旅館・廃別荘等、沢山見たことが有りますが、その影響で自然景観・地域性の良さが見えません。
年月が過ぎると共に、当時を知る方も他界され、今を生きている私共から見たら残念に思えます。
街並みや自然景観からの調和もなく、経済性が優先された事が一番大きな原因ではないかと思います。
当時は、『建築基準法・都市計画に違反しなければ良いのでは』と言う状況だったと思われます。
テレビ・インターネット・雑誌等で、諸外国の伝統文化と風格・調和のとれた街並みと比較すると、その差が感じられます。
日本では、高層マンションの建設で各種トラブルや、屋外広告の氾濫等にて景観の価値意識が、時代と共に意識付けられました。
一部の地方自治体では、地域住民の要望に応え、『景観条例』を定めていましたが、自主条例のため強制力が無かったもので、建築確認する際に遵法性は無かったとの事です。
1990年代頃より、現・国土交通省自ら発注する公共工事に於いて、景観に配慮調和するようになり、『美しい国づくり政策大網』を策定し『景観法』が2004年(平成16年)6月に公布されました。
2005年(平成17年)6月1日付けにて、景観法が全面施行され、『景観行政団体』である地方自治体が定める『景観条例(法委任条例)』は、景観法を背景に景観問題に対して大きな役割を果たせるようになりました。
『景観法自体が直接景観を規制する訳では無い』のですが、『地方自治体の景観に関する条例に関する計画・条例それに基づいて地域住民が締結する景観協定に、実効性・法的強制力を持たせる』ものです。
❷法的な目的について
景観法第一条(目的)
『この法律は、日本の都市、農山漁村等における良好な景観の形成を促進するため、景観計画の策定その他の施策を総合的に講ずることにより、美しく風格のある国土の形成、潤いのある豊かな生活環境創造及び個性的で活力ある地域社会実現を図り、もって国民生活の向上並びに国民経済及び地域社会の健全な発展に寄与することを目的とする。』
上記条文は、『景観法第一条』をそのまま引用しております。
❸景観行政団体
『景観行政団体』とは、都道府県・指定都市等、又は都道府県知事と協議して景観行政を実施する市町村を指します。
施行1年経過した時点で『121市町村』が『景観行政団体』になりましたが、それ以降増えていくと思います。
❹景観に関する制度について
①景観計画
『景観計画区域内の建築等』に関して届出・勧告による規制を行うとともに、必要な場合に建築物等の形態・色彩・意匠などに関する変更命令を出すことができるとされています。
景観計画の策定状況は公表されており、『景観計画』は、景観行政団体が策定しますが、住民が提案することも可能です。
2016年(平成28年)『明日の日本を支える観光ビジョン構想会議』で、観光地を魅力向上のために、2020年を目途に原則として『全都道府県と全国の半数の市区町村で景観計画』を策定する事が目標となっております。
②景観地区
『景観地区』は、都市計画によって街の景観を維持するために定められた『補助的地域地区』です。
『都市計画区域及び準都市計画区域内』では、『景観地区』を設定することが出来ます。
条例を制定することで、その他の地域でも『準景観地区』を設定する事が出来ます。
『景観地区内の形態意匠』は、『都市計画に定められた建築物の形態意匠の制限に適合するもの』でなければなりません。
景観法により『従来の美観地区は廃止』され、『美観地区』が、これまで良好な景観を維持することが目的でしたが、『景観地区』では、『これからの良好な景観を形成を図るため設定することが出来る』と大きく変りました。
条例等で『景観地区を美観地区』と呼ぶことで、『美観地区』と残る自治体も御座います。
③景観協定
『景観計画区域内の土地所有者』等は、『景観協定を締結』することが出来ます。
意匠など地区計画よりも制限できる項目が広く、従来の自治体の条例に基づくものと異なり強制力があり、また協定締結後に区域内の不動産を取得した人も拘束するので、契約締結者のみが拘束される普通の契約(協定)より強い効力を持ちます。
❺景観重要建造物と景観重要樹木
『景観行政団体』は『景観重要建造物』や『景観重要樹木』を指定することが出来ます。
➏景観整備機構
『景観行政団体』は、『公益法人やNPO法人を景観整備機構』として指定することが出来ます。
❼景観計画区域
『景観計画によって定められる区域』とされます。
『東京都景観計画』等、『殆どの景観計画では計画を策定した自治体の全域が景観計画区域に指定』されています。
以上が『景観法』の大よその説明とさせて頂きます。
都市計画区域の殆どが『景観法』がかかっており、不動産を購入若しくは再建築・外壁等の補修する際、遵守する必要が有ります。
詳しくは、弊社までご相談頂ますよう宜しくお願い致します。
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