売却する際の特例とは①
居住用財産の譲渡損失の繰越控除等制度の違いは?
『特別控除』を最大限利用するには?
10月に入ると、通年、過ごしやすくなるのですが、今年は急に肌寒くなったり、少し暑かったり何となく体がついて行かないような気がします。
当方は、都内の不動産会社ですが、時には『雪国や、名古屋・大阪・京都・四国等の遠隔地域』の不動産取引を行っており、気温差という地域格差も御座います。
遠方に行くたびに、半ば旅行気分になるものですが、不動産の業務はそんな気分にならないので残念です。。
今回のブログは『不動産を売却する際の特例』について掘り下げて、考察してみたいと思います。
1,所有期間が『10年超の居住用財産』を譲渡した場合の軽減税率の特例
この制度は、個人がその年の1月1日において、所有期間が10年を超える次の居住用財産を譲渡した場合に適用されます。
①自らが住んでいる住宅
②以前に自らが住んでいた住宅で、自分が住まわなくなった日から3年後の12月31日までに譲渡したもの
③上項の住宅と敷地
④災害によって滅失した『自らが住んでいた住宅』の敷地で、滅失しない場合、その年の1月1日における所有期間が10年を超えている住宅の敷地
但し、その災害があった日以後3年を経過する日の属する年の、12月31日までに譲渡したものに限定されます。
この特例は、3,000万円特別控除とセットにて利用できます。
所有期間10年超える条件以外は、3,000万円特別控除の要件と同じです。
計算方法
3,000万円特別控除後の譲渡益について、以下の税率にて課税されます。
※平成25年より『復興特別所得税』として、所得税額の2.1%が別途かかります。
●3,000万円特別控除後の譲渡所得のうち6,000万円以下の部分は10%
※ほかに住民税4%
●3,000万円特別控除後の譲渡所得のうち6,000万円を超える部分は15%
※ほかに住民税5%
2,特定の居住用財産の買換え特例
この特例の適用が受けられるのは、令和7年12月31日迄の間に、居住用の住宅やその敷地を売却した場合、譲渡資産及び買替資産が、下記の要件に該当する場合です。
①譲渡資産
要件内容として、居住用資産でその譲渡した年の1月1日における『所有期間が10年を超える』もので、『譲渡に係る対価が1億円以下』のもの。
❶自らが住んでいる住宅で、居住期間が『10年以上』であるもの。
❷以前に住んでいた住宅で、居住期間が『10年以上』であるもので、自分が住まなくなった日から3年後の12月31日までに譲渡されるもの。
❸自らが住んでいる住宅で、居住期間が『10年以上』であるものと、以前に住んでいた住宅で、居住期間が『10年以上』であるもので、自分が住まなくなった日から3年後の12月31日までに譲渡されるもの、住宅及びその敷地
❹災害によって、自らが住んでいる住宅で、居住期間が『10年以上』の住宅が滅失した場合において、その住宅を引き続き所有していた場合、その年の1月1日における所有期間が10年を超えるその住宅の敷地。
※災害があった日以後3年を経過する、日の属する年の12月31日までに譲渡されることが条件です。
②買替資産
❶買替資産は、譲渡資産を譲渡した年か、その前年中に取得したもの又は譲渡した年の、翌年1月1日~12月31日迄に取得する見込みであること。
❷買替資産を以下の日時に掲げる日迄に、その者の居住用として使用すること。
1⃣譲渡した年または、その前年取得は、譲渡した年の翌年12月31日まで
2⃣譲渡した年の翌年取得は、譲渡した年の翌々年12月31日まで
※上記1⃣・2⃣に掲げる日までに居住できない場合、原則として特例適用は認められないことになります。
但し、災害により滅失した場合、特別な事情がある場合、認められます。
❸取得する住宅の床面積は『50㎡以上』であること。
❹買替資産が『中古の耐火建築物』である場合には、その『中古の耐火建築物』が新築後25年以内であるのか、又は、『新耐震基準に適合』することが証明されるものか、若しくは、『既存住宅売買瑕疵担保責任保険』に加入していること。
※その家屋の取得の前2年以内に契約締結したものに限ります。
買替資産が『非耐火既存住宅』の場合、新築後25年以内であるか、又は、地震に対する安全基準に満たすこと。
※取得期限までに改修等を行って耐震基準に適合した場合、適用できます。
❺取得する敷地は、その面積が500㎡以下であること。
❻令和4年1月1日以後に行う『譲渡資産の譲渡に係る買替資産』については、買替資産が令和6年1月1日以後に建築確認を受けない住宅
※登記簿上の建築日付が、令和6年6月30日以前のものは除きます。
又は、建築確認を受けない住宅で、登記簿上の建築日付が令和6年7月1日以降のものである場合には、その住宅が一定の省エネ基準を満たすものであること。
計算方法
居住用財産の買換えは、今まで居住していた住宅・敷地を売却して、新たに居住用の住宅や敷地を買うことですが、この特例の中身は、取得価額の引継ぎによる課税の繰り延べになります。
❶譲渡した資産の譲渡価額が、買い換えた資産の取得価額を下回る場合、その譲渡はないものとして税金はかかりません。
❷譲渡した資産の譲渡価額が買い換えた資産の取得価額を上回る場合には、売却代金のうち、購入代金を上回る部分についてだけは、譲渡があったものとされ課税されます。
その代金が残り、課税される場合の課税長期譲渡所得金額計算は以下の計算式になります。
1⃣譲渡資産の売却代金-買換資産の購入代金等=収入金額
2⃣(譲渡資産の取得費+譲渡費用)×(収入金額÷譲渡資産の売却代金)=取得費・譲渡費用
3⃣ 収入金額-取得費・譲渡費用=課税長期譲渡所得金額
3,居住用財産の買換えにかかる譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
この特例を受けるための要件は?
個人が、土地・建物を譲渡して損失が発生した場合、通常はその損失分を他の所得(給与所得・事業所得)から控除したり、繰越して控除したりすることが出来ません。
※ほかの所得の損失を土地・建物の譲渡益から控除することも出来ません。
しかしながら、特定の居住財産の譲渡損失についてのみ、その年の他の所得から控除(損益通算)することは可能で、控除しきれない残額がある時は、その残額をその翌年から3年間に繰り越して各年の給与・事業所得等の総所得金額(合計所得金額が3,000万円以下の年分に限ります)から、控除できるようになります。
この特例の適用を受けられるのは、次の要件を備えた『居住用財産の譲渡損失』です。
その敷地の面積が『500㎡』を超える場合、その超える部分に対応する損失は除かれます。
住宅ローン控除の併用も認められております。
①譲渡資産
令和7年12月31日迄の間に譲渡される自己の居住用の土地家屋で、その譲渡した年の1月1日において所有期間が、5年を超えるもののうち、以下の何れかに該当する必要が有ります。
1⃣現に自らが住んでいる住宅
2⃣以前に自らが住んでいた住宅で、自分が住まなくなった日から3年後の12月31日迄の間に譲渡されるもの。
3⃣現に自らが住んでいる住宅や、以前に自らが住んでいた住宅で、自分が住まなくなった日から3年後の12月31日迄の間に譲渡されるものの、住宅及びその敷地。
4⃣災害によって滅失した自宅の住宅の敷地で、その住宅が滅失しない場合、その年の1月1日における所有期間が5年を超えている住宅の敷地。
※但し、その災害があった日以後、3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡されるものに限定されます。
②買替資産
1⃣譲渡資産の譲渡をした年の前年の、1月1日~翌年12月31日迄の間に、取得される自己の居住用に供する家屋、又はその敷地。
2⃣その家屋の居住部分の床面積が『50㎡以上』であること。
3⃣その取得日から取得した年の翌年の12月31日迄の間に、自己の居住すること。
または、供する見込みのあること。
4⃣買替資産を取得した年の12月31日において、買替資産に係る住宅借入金等(返済期間10以上のローン契約によるもの)の金額を有していること。
③譲渡損失の損益通算の計算
その年に特定の居住用財産の譲渡の他に、土地建物の譲渡があって、その譲渡益がある場合には、その譲渡益がある場合には、その一時所得そして利子所得・配当所得・不動産所得・事業所得・給与所得と、雑所得から控除し更に山林所得・退職所得の金額から控除するように計算します。
④譲渡所得の繰り越し控除の計算
繰越控除が適用される譲渡資産に係る譲渡損失の金額は、譲渡資産に係る譲渡所得の計算上生じたその年の損失額のうち、その損益通算をしても、なお控除しきれない部分の損失とされます。
譲渡収入-取得費-譲渡費用=譲渡所得に係る損失額(赤字額)
他の所得金額-譲渡所得に係る損失額=譲渡損失の金額
※譲渡損失の金額(控除しきれない損失額)→繰越控除の対象となる金額
4,居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
①特例を受けるための要件
個人が自分の住まいである土地・建物を譲渡して損失が発生した場合、買替をしなくても、譲渡損失の金額のうち譲渡資産の住宅借入金等を控除した差額を限度として、他の所得との通算及び翌年以後3年間の繰り越し控除が出来る制度です。
この特例の適用を受ける場合の要件
❶個人が、平成16年1月1日~令和7年12月31日迄の間に、その家屋・土地で1月1日において所有期間が5年を超える居住用財産
1⃣現に自らが住んでいる住宅
2⃣以前に自らが住んでいた住宅で、自分が住まなくなった日から3年後の12月31日迄の間に譲渡されるもの。
3⃣現に自らが住んでいる住宅や、以前に自らが住んでいた住宅で、自分が住まなくなった日から3年後の12月31日迄の間に譲渡されるものの、住宅及びその敷地。
4⃣災害によって滅失した自宅の住宅の敷地で、その住宅が滅失しない場合、その年の1月1日における所有期間が5年を超えている住宅の敷地。
※但し、その災害があった日以後、3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡されるものに限定されます。
1⃣~4⃣の何れかに該当するものを譲渡すること。
❷その個人が、その譲渡に係る契約を締結した日の前日において、その譲渡資産に係る一定の住宅借入金等の残債を有すること。
❸繰越控除する各年分の合計所得金額が、3,000万円以下であること。
❹譲渡先が、その個人の配偶者その他、特別の関係がある者ではないこと。
②特例を受けることが出来る損失の限度額は?
この特例が適用される譲渡資産に係る譲渡損失の金額は
譲渡収入-取得費-譲渡費用=譲渡所得に係る損失額(赤字額)
他の所得金額-譲渡所得に係る損失額=譲渡損失の金額
※譲渡損失の金額(控除しきれない損失額)→繰越控除の対象となる金額
上記の計算になりますが、契約締結日の前日における、その譲渡資産に係る住宅借入金等の残債の合計額から、その譲渡資産の譲渡価額を控除した差額が限度となります。
5,居住用財産の譲渡損失の繰越控除等制度の違いについて
居住用財産を譲渡して、損失が生じた場合に適用できる特例として、2つの特例が有ります。
『居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除等』
『特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除等』
上記の制度の内容は違うので比較する必要が有ります。
①『居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除等』
❶譲渡資産の所有期間等
譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超えるもの
❷譲渡資産の住宅借入金の有無
制限なし
❸買替条件
床面積が50㎡以上等の一定の要件を満たす買替資産を買い換える。
10年以上の返済期間がある住宅借入金により取得すること
❹所得要件
合計所得金額が『3,000万円』以下であること
❺繰越控除等される金額
損失金額が、他の所得との通算及び3年間の繰越控除の対象となること
②特定居住用財産の譲渡損の繰越控除等
❶譲渡資産の所有期間等
譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超えるもの
❷譲渡資産の住宅借入金の有無
譲渡契約締結日の前日において借入残高があること
❸買替条件
買替は要件に非該当
❹所得要件
合計所得金額が『3,000万円』以下であること
❺繰越控除等される金額
損失の金額のうち
『ローン残高-譲渡価額』の金額を限度として他の所得との通算及び3年間の繰越控除の対象になります。
両制度の大きな違いは、居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除等は、住宅ローンを組んだ買替を絶対要件としているのに対し、特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除等は、譲渡資産の住宅ローンの残債が、譲渡価額を上回っていることが『絶対条件』で、買替を要件とはしておりません。
その代わり、居住用財産の買換え等の場合の損失の全額が、他の所得との通算及び繰越控除の対象となるのに対し、特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除等は、他の所得との通算及び、繰越控除の対象となる金額に制限が設けられている点が大きく異なります。
以上が、『特別控除を最大限』受ける手続きのご説明になります。
次回は、その手続きに関するご説明の続編となります。
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