『売買契約』における紛争について❸
『契約締結上の過失』は最重要課題とされています。
『売買契約』の解除について熟知することは重要!
不動産の『売買契約』は、人生の中で数多く触れるものではないので、ご売却される方々に分かりやすく、明文化できるような説明が重要とされております。
今回のブログは『売買契約』についての続編を考察したいと思います。
1,『特別法』による特約について
①宅地建物取引業法による、宅建業者が『売主』の売買における特約の効力
❶宅地建物取引業は、宅建業者が自ら売主にとなる売買契約においては、目的物の契約不適合を担保とすべき責任に関して、【民法第566条】に規定する期間について、目的物の引渡し日から2年以上となる特約をする場合を除いて、同条に規定するものより、買主に不利となる特約をしてはならないものとされております。
【宅地建物取引業法第40条第1項】
買主に不利となる特約は『無効』とされます。
【宅地建物取引業法第40条第2項】
❷従前、宅地建物取引業者による自ら売主の場合の担保責任は、瑕疵担保責任の特約に対する制限でした。
令和2年4月1日施行の民法改正により、『瑕疵担保責任が廃止』され、『契約不適合責任』の仕組みが取り入れられました。
そのために【宅地建物取引業法第40条第1項】も、民法の規定に合わせて、『瑕疵担保責任の制限』から『契約不適合の制限』に改めました。
ここで、『瑕疵担保責任』が、その責任が限定された範囲に留まり、それに対し、『契約不適合責任』については、一般の契約ルールが適用されます。
建物取引業法によって、効力が否定される特約の範囲が、従前と比較すると拡充されます。
『隠れた瑕疵については売主が責任を負う』という特約事項、目的物に契約不適合があった時の救済手段について先後をつける特約
※民法で認められた救済手段の選択を認めないものとして完全に不利
目的物に契約不適合が有った時の救済手段について先後をつける特約
※民法で認められた救済手段の選択を認めないものとして買主に不利
『売主は引き渡し後2年間に限り担保責任を負う』という特約
【改正により契約不適合責任の追及のためには2年以内に契約不適合がある旨を『通知』すればいいことになっており、2年以内に『請求』までを要求することは『買主に不利』】
売主の担保責任を問うための通知について『通知方法を書面通知に限る』とする特約
【書面でなければ、およそ通知として受け付けないものとする】特約
買主に不利になるので、【宅地建物取引業法第40条第1項】によって禁止され、
【宅地建物取引業法第40条第2項】によって『無効』になります。
②住宅品質確保法
『住宅品質保護法』は、新築住宅の売買において、構造耐力上の主要部分、雨水侵入防止部分については、10年間の瑕疵担保責任を義務化しております。
【住宅品質確保法第95条第1項】
この規定は『強行規定』であり、これに反して『責任期間を短縮』し、或いは、責任を免除する特約には効力を認められません。
【住宅品質確保法第95条第2項】
但し、特約によってはこの期間を【20年間】まで延長することは可能とされます。
【住宅品質確保法第97条】
なお、売主の担保責任に関し、民法では『瑕疵』という言葉は廃止されました。
住宅品質確保法では、『この法律において【瑕疵】とは、種類又は品質に関して契約の内容に適合しない状態をいう』とのを設けたうえで、引き続き目的物の欠陥を示す法律上の用語として用いれております。
定義規定【住宅品質確保法第2条第5項】
③商人間の不動産売買
※商人間売買とは『売主と買主がいずれも商人である売買取引』
商人間売買に関しては、買主が目的物を受け取った時は、遅滞なくこれを検査しなければならず、検査によって『売買の目的物が種類・品質・数量に関して契約の内容に適合しないこと』を発見しながら直ちに通知しない時は、損害賠償請求をすることが出来なくなるとして、買主に検査・通知の義務【検査通知義務】が定められています。
売買の目的物が、種類又は品質に関して契約の内容に適合しないことを、発見することが出来ない場合において、買主が6ヵ月以内にその不適合を発見した時も、同じく損害賠償等の請求をすることが出来ません。
【商法第526条第1項、第2項、第3項】
不動産の売買についても、商法が適用される場合には、特約がない限り、買主には商法による検査通知義務があると理解されます。
商法による検査通知の義務の定めは、強行規定ではなく、法の定めと異なる特約も有効とされます。
④消費者契約法
売主が事業者、買主が消費者のケースでは『売主の担保責任を全部免除する』などの特約は不当条項として無効となります。
2,契約の解除について
①契約解除の意義について
契約を締結後に、当事者の一方的な意思表示により【契約が初めから存在しない状態に戻す】効果を生じさせることを『契約の解除』と言います。
【民法第540条第1項】
②契約解除と類似した制度について
❶解約(告知)
賃貸借・委任などのような継続的な契約関係を一方的に解消する場合、これを特に解除と区別して『解約』や『告知』と言います。
この場合、『その効果は将来に向かって契約を消滅(終了)させるだけで、解除のように遡及しない点に特色』があります。
❷合意解約(解除契約)
解除権の有無を問わず、当事者が現に存在する契約を解消して、契約がなかったことにしようとする合意を新たにすることを合意解除(解除契約)といい、『契約自由の原則により自由』にできます。
あくまでも、当事者の契約(合意)に基づいて、解除のように解除権者が一方的な意思表示で行うものとは異なります。
❸解除条件について
一定の事実の発生によって、法律行為の効力が当然に消滅するという条件を『解除条件』と言います。
『条件の一種』であり、『契約の解除』とは明らかに異なる概念になります。
❹取消しについて
制限行為能力や、錯誤、詐欺、強迫による意思表示などの場合に、その意思表示を当初にさかのぼり無効にしようという意思表示のことを『取消し』と言います。
取消しについては、一方的意思表示で契約の相手方が行った意思表示の効果を消滅させる点は『解除』と同じですが、解除においては意思表示に問題があるのではなく、契約上の義務を履行しない等の理由にて、意思表示の効果を失わせるとして、取消しの場合は、意思表示それ自体に問題があり、意思表示の効果を消滅させる仕組みである点で『解除』と異なります。
3,解除権の発生について
解除権を、その発生原因により区分すると『約定解除権』と『法定解除権』に分類されます。
①約定解除権とは
解約手付による解除のように、当事者の合意により生ずるものです。
②法定解除権とは
債務者が債務を履行しない場合にあって、相当の期間を定めてその履行を催告し、その期間内に履行が無いときは、解除することが出来ます。
【民法第541条】
この場合の解除の権利が、『法定解除権』です。
その期間を経過した時における債務の不履行がその契約・取引上の社会通念に照らし合わせて軽微であるときは、解除権は生じません。
【民法第541条但し書】
期間を定めないで催告した場合や期間が相当でなかった催告についても、その催告から相当期間を経過すれば解除の効果が生じることになります。
解除の前に催告を必要とするのは、催告によって債務者の翻意を促し、債務を履行する機会を与えられながら、債務の履行をしない場合に初めて解除が可能になると考えられます。
そのために、催告によって債務者に翻意の機会を与える必要がない場合には、催告をせずに契約を解除することが出来ます。
催告をしないで契約を解除することが出来るのは幾つか御座います。
【民法第542条第1項】
❶債務の全部の履行が不能の時
❷債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示した時
❸債務の一部の履行が不能である場合、または債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することが出来ない時
❹契約の性質または当事者の意思表示により、特定の日時または一定の期間内に履行をせずに契約をした目的に達しない場合において、債務者が履行をしないで、その時期を経過した時
➎債務者がその債務の履行をせず、債権者が前条の催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行が見込みがないことが明らかな時
4,解除権の行使について
『解除権』は、相手方に対する一方的な意思表示によってこれを行使します。
【民法第540条第1項】
いったん解除した以上、これを撤回することはできません。
【民法第540条第2項】
『解除権の行使』には、条件を付することが出来ません。
これを認めてしまうと、法律関係を不安定にしますが、催告をする際に『7日以内に履行がなされなけえば、改めて解除の意思表示をしなくても契約は解除されたものとされます』という意思表示は、法律関係を不安定にするものでないので、許される内容とされます。
一つの契約に当事者が数人存在するときは、その全員から、または全員に対して解除の意思表示を行わなければなりません。
【民法第544条第1項・解除権の不可分性】
5,解除権行使の効果について
解除権の行使により『契約は最初に遡って消滅』します。
その結果、当事者は互いに原状回復義務を負います。
【民法第545条第1項】
既に引き渡された目的物件は返還され、給付された金銭は返還されますが、解除の結果、金銭を返還する時は、『受領の日からの利息』を付さなければなりません。
【民法第545条第2項】
また、金銭以外の物を返還する時は、その受領の時以後に生じた果実も返還しなければなりません。
【民法第545条第3項】
※民法でいう『果実』とは、物から生じる収益のことで、『天然果実』と『法定果実』に分けられます。
『天然果実』とは、物の用法に従って収取される産出物(果実・野菜・牛乳)
『法定果実』とは、物の使用の対価として受領する金銭そのほか(地代・家賃・利息)
解除の遡及効は、第三者に及びません。
【民法第545条但し書】
解除がなされても、債務不履行により発生した損害について、損害賠償請求をすることが出来ます。
【民法第545条第4項】
6,解除における保証人の責任について
契約当事者の保証人になった者は、特約がない限りその契約から生ずる一切の債務を保証し、その契約の履行によって相手方に損失を被らせない趣旨であるので、解除の場合の原状回復義務についても、保証責任を負います。
7,契約締結上の過失について
❶契約締結上の過失の意義について
契約が成立していない場合にも、当事者間の『信義則』が適用され、一方当事者に『信義則違反』があった場合に、相手方に対する損害賠償義務を負う場合があります。
このような契約締結に至るまでの間に落ち度のある場合を『契約締結上の過失』と言います。
例えば、ほぼ確実に契約締結できる段階でありながら、相手側に落ち度が全くないのに、一方的に破棄した場合や、契約締結前段階において、契約締結するか否かを判断するために必要な重要説明をしないで、契約締結させたような場合に、契約上の過失が認められて、損害賠償責任を認めることがあると言われております。
❷契約締結上の過失についての判例傾向について
民法には、契約締結上の過失について明示規定はありませんが、権利の行使、義務の履行は、信義に従って誠実に行わなければなりません。
【信義則上の義務・民法第1条第2項】
契約準備段階において、交渉に入った者同士の間では、誠実に交渉継続し、一定の場合には重要な情報を相手方に提供すべき信義則上の義務をおい、この義務に違反した場合は、それにより相手方が被った損害については、賠償しなければなりません。
❸損害賠償請求権の性格
契約締結上の過失に基づく損害賠償請求の法的な性格について、かつては、『契約責任』もしくは、『不法行為責任』なのかについて議論がありました。
これに対して、最高裁でも争われたものです。
『契約の一方当事者が、当該契約の締結に先立ち、信義則上の説明義務に違反して、当該契約を締結するか否かに関する判断に影響を及ぼすべき情報を相手方に提供しなかった場合』には
上記一方当事者は、相手側が当該契約を締結したことにより被った損害につき、不法行為による賠償責任を負うことがあるのは、格別、『当該契約上の債務の不履行による損害賠償を負うことにない』と論じ、契約責任ではなく、『不法行為責任』という考え方を採用されております。
以上が『不動産売買契約』に関する紛争に関しての、ご説明となります。
売買契約を締結する際は、売主の所有する不動産を仲介会社が、買主に説明することがトラブルの回避と安全な取引になります。
特に中古、経年劣化した物件はとても難しいものです。
コミックス漫画・テレビドラマにて放送しておりました『正直不動産』をご参照頂ければと思います。
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