『契約不適合責任』って⁈
民法改正にて『買主』に有利になります!
令和2年4月1日以降の契約締結から変ります!
5月も下旬に入り、春先と夏場の空気が入れ替わりしており、風邪をひきやすい季節になりました。
亀戸店のご近所さんは、正直高齢化社会の代表と言える地域で、100歳近い方も何時も元気で生活されております。
高齢化社会と言えど、不動産業界も例外ではなく60歳以上の方も従事しておりますが、宅地建物取引業法の内容もかなり変貌しております。
今回は、5年前に民法改正され少しづつ認識される『契約不適合責任』についてお浚いも兼ねて考察してみたいと思います。
1,瑕疵担保責任から契約不適合責任の違い⁇
基本的に、『瑕疵担保責任』と『契約不適合責任』は基本的に性格が違い、令和2年4月1日施行の改正民法は、債権法の分野の重要改正になります。
改正前の民法では、売買の目的物が通常、品質・性能を欠くことを『瑕疵』と呼ばれ、見えない(隠れた)部分の瑕疵については『売主の瑕疵担保責任』として、『損害賠償』や『契約解除』の責任が有りました。
自分も、不動産を売却したことが有りますが『見える部分でクレーム』が入る事例も有りましたが、見えない(隠れた)部分の問題は、とても大変です。
改正前の民法では、不動産は取替がきかない『特定物』については、隠れた瑕疵があっても売主が修補をする余地はないものです。
売主は、目的物を現況で買主に引き渡せば債務の履行を完了したことになりますが、債務不履行ではないとされてましたが、それでは対価を支払う買主に不公平となりますので、法律として『債務不履行責任』とは別の、『瑕疵担保責任』の制度を設けててました。
買主に損害賠償請求と、契約解除の2つの救済手段が与えられておりました。
通常これを【法定責任】と言います。
しかしながら、売買契約を締結した当事者は当然、目的物に欠陥等がないものを想定しておりますので、昔からの考え方は当事者の意思や常識からかけ離れていると批判もあり、引き渡し後にトラブルを抱えておりました。
2,民法改正後は⁈
令和2年4月1日の民法改正後は、売買の目的物が特定物なのか、不特定物を問わず目的物を現況で引き渡すだけでは履行は不完全であるので、売主は『契約内容に適合』したものを引きわたす契約上の債務を負うと言う考え方を前提になります。
引渡しした物件が、欠陥等の契約不適合であれば、売主は完全な履行を行い、債務不履行責任を負う制度に改めました。
売買において買主に引き渡された目的物が『種類・品質・数量に関して契約内容に適合しない』もので有るとき、売主は契約上の債務として契約不適合のない目的物を引き渡す必要が有ります。
買主は売主に対して
①修補などの追完請求【民法第562条】
②代金減額請求【民法第563条】
上記ができるようになりました。
契約不適合のある目的物を引き渡しても債務の履行を果たしたことにならないため、買主は、不履行の一般原則により、損害賠償請求【民法第415条】や、契約解除【民法第541条・第542条】が出来るとされております【民法第564条】
契約不適合責任の内容に関しては、従来の法令と比較することが重要です。
瑕疵担保責任を『旧』とし、契約不適合責任を『新』としてご説明いたします。
対象契約
旧・令和2年3月31日までの契約締結
新・令和2年4月1日以降の契約締結
法的性質について
旧・法的責任
新・契約責任(債務不履行責任)
目的物について
旧・特定物に限られる
新・特定物・不特定物を問わない
責任の対象について
旧・隠れた瑕疵
新・契約不適合
(目的物が種類・品質又は数量に関して契約の内容に適合しないもの)
買主の要件について
旧・善意・無過失
新・善意・無過失は要件ではなくなる
売主の要件について
旧・無過失責任(帰責事由不要)
新・損害賠償を除き帰責事由は不要
責任の内容(買主の権利)について
旧・追完・代金減額請求は不可、損害賠償・解除は可(売主の帰責事由は不要)
新・追完・代金減額・損害賠償・解除を認められます(損害賠償以外売主の帰責事由不要)
損害賠償の範囲について
旧・信頼利益に限ります
新・履行利益に及びます
※履行利益の定義は、契約が有効に成立して、それが完全に履行された場合、債権者が得られるはずである利益のことになります。
解除の要件について
旧・契約目的を達することが出来ない場合
新・契約不適合が軽微でない場合
買主の権利の期間制限
旧・瑕疵を知った時から1年以内の権利行使
新・種類又は品質の契約不適合を知った時から1年以内の通知
3,契約不適合の概念について
引き渡された目的物が『種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないもの』であるかどうかは、経緯・書面の内容により、個々の契約の具体的な諸事情と、取引上の社会通念に照らし合わせて決められます。
改正前の民法の『瑕疵』に該当するかどうかの判断において、判例は『契約当事者が予定していた品質・性能』等も考慮していたことから『瑕疵』と『契約不適合』は、大きくは異なる訳ではないですが、法文上、『契約内容に適合するか否か』の判断となることから、契約書の記載内容や当事者の認識が、より重視される意向が強まるのではとの指摘も有ります。
瑕疵担保責任は『隠れた瑕疵』であること。
今までは、買主が瑕疵について善意・無過失であることが適用要件とされてましたが、契約不適合責任では、買主が欠陥を知りえたからといって、売主を免責する必然性はないとして、『買主の善意・無過失要件』ではなくなりました。
買主が欠陥等を知っていた事情は、契約内容としてどのような品質を予定していたかを確定するための重要な判断要素になりますが、それだけで売主が担保責任を回避できなくなりました。
以上が、『瑕疵担保責任』と『契約不適合責任』の大まかな違いのご説明となります。
次回のブログは、『心理的瑕疵』について考察したいと思います。

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